平城宮跡東院庭園を訪れる(奈良県奈良市)

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1.平城宮跡東院庭園とは

平城宮跡東院庭園
©岩本まさき

平城宮跡東院庭園は、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産となっている「平城宮跡」にある奈良時代の庭園遺構です。
平城宮跡は奈良時代の都、「平城京」の宮殿部分で、天皇の生活空間である「内裏(だいり)」を中心に、多くの政庁が軒を連ねていました。

今回訪れる平城宮跡東院庭園は、その名の通り平城宮の東側「東院」と呼ばれるエリアで発掘された庭園で、かつては皇族らが宴会や儀式を行う場所、一種の迎賓館のような役割を果たした庭園であるといわれています。
庭園の遺構は昭和42(1967)年に発掘され、その後平成10(1998)年に長年の研究の成果を元にして現在の形に復元されました。

この庭園の特徴は「日本庭園の原型」を肉眼で目にすることができる点で、その後の平安時代に「寝殿造庭園」や「浄土式庭園」で完成した庭園の様式、「州浜」や「築山石組」「曲水」が既に奈良時代には誕生していたことがわかります。

平成22(2022)年には優秀な風致景観と学術上の価値が認められ、国の特別名勝にも指定されています。

2.庭園を歩いて

平城宮跡東院庭園は平城宮跡史跡公園の東端部に位置しています。
その立地が関係してか訪問する人は多くなく、訪れた日もよく晴れた日曜日にもかかわらず周囲の人影はまばらでした。

庭園は南と東を土塀で、北を森で区切られた中に位置しており、東側から庭園へ入る構造となっています。
その東側も、エントランスとなる建物から庭園へ抜けるには互い違いになった板塀の合間をくぐっていく構造となっており、意図的に隠されたような展示になっているのを面白く感じます。

そうして板塀を抜けると目の前が急に明るくなり、眼前に池を伴った大庭園が広がりました。
池の底には白石が敷き詰められており、池の中島には朱塗りの建物が建っています。土塀の向こうには春霞を伴って若草山が見えており、それらが一体となった景観は、「奈良」時代の庭園を強く感じさせるものでした。

庭園内は池を一周するように散策することができ、様々な角度から庭園の風景を楽しむことができますが、やはりこの庭園で一番感動するのは板塀をくぐって遥かに三笠山を背景にする庭園を見た瞬間にあると思っています。

3.庭園の見どころ

平城宮跡東院庭園

平城宮跡東院庭園の見どころを細かく見ていくと、一番にはやはり美しい州浜が再現されている点が挙げられます。
州浜を伴った庭園では、「宇治平等院」や「仙洞御所庭園」などが有名ですが、東院庭園はそれらの庭園の様式が完成する以前の遺構であり、日本庭園の基礎を自分の目で見て、知ることができます。

美しい州浜の真ん中には橋を介して建物が再現されており、その横には曲水と呼ばれる小さな小川が流れています。
池に突き出す建物は後の平安時代、「寝殿造庭園」においては釣殿となっていく建物で、貴族が歌会や雪見や月見を楽しむ空間であったことがわかっているほか、曲水では「曲水の宴」と呼ばれる歌会兼酒宴が開かれました。

この庭園からは実際に建物の遺構や石組、そして川の跡が見つかっており、これら平安時代の貴族の優雅な遊びも奈良時代には既に原型があったことがわかります。

この庭園からは、そうした後の時代の文化との繋がりも想像できるのが楽しめるポイントだろうと思います。

⒋おわりに

依水園

ここまで平城宮跡東院庭園について話してきました。
文中でお話しした通り、世界遺産に隣接しながら訪れる人は多くない庭園で、庭園の眺めを独り占めできる、庭園好きには特に強くお勧めしたい庭園です。

奈良にはここ以外にも多くの庭園があり、特に「平城京左京三条二坊宮跡庭園」は東院庭園よりも歴史を遡る庭園と考えられ、国の特別名勝と特別史跡にダブル指定されるなど注目度が高いため、ぜひ合わせて訪れたいところです。
少し移動し、奈良公園近くまで来ると東大寺や若草山を借景としていることで名高い「依水園」もあり、奈良公園散策の際などにたちよってみるのも良いかと思います。

名称平城宮跡東院庭園
住所〒630-8001
奈良県奈良市法華寺町480
電話番号0742-32-5106
営業時間9:00~16:30
月曜定休
主なアクセス方法近鉄電車大和西大寺駅などからバス運行有り
関連するサイトhttps://narashikanko.or.jp/spot/world_heritage/touinteien/
岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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