「日本でもっとも豊かな隠れ里」、人吉の城下町を歩くコース(熊本県人吉市)

6 min

1.はじめにーモデルコースの概要ー

球磨川下り
©熊本県観光連盟

この記事では熊本県の南東端、鹿児島県・宮崎県との県境に位置する盆地のまち、人吉市のおススメスポットをモデルコース形式で紹介しています。

人吉は見どころの多いまちで、歴史ある街並みそのものが「小京都」として知られているほか、熊本県の文化財のうち3分の2を有する「文化財の宝庫」であり、全国的に珍しい米焼酎を醸造する「酒どころ」でもあります。
人吉盆地の中心部には日本三大急流のひとつに数えられる「球磨川」が流れており、かつての物流の大動脈で現在はラフティングなどのアクティビティの数々を楽しむこともできます。

それら人吉の見どころを、この記事ではぎゅっとモデルコース形式でご紹介しています。実際の所要時間や滞在時間も考慮してルーティングしていますので、そのまま巡っていただくのも良いですし、特急列車や九州自動車道を用いた短時間の滞在や、移動手段をレンタサイクルやレンタカーに変えてみるといったカスタマイズも良いかと思います。

2.モデルコース

ルート:JR人吉駅→人吉鉄道ミュージアムMOZOCAステーション868→青井阿蘇神社→うなぎ専門店 しらいし→繊月酒造→人吉城跡→人吉温泉 元湯→人吉温泉物産館
移動手段:徒歩
所要時間:6時間~

10:00 JR人吉駅

人吉駅
©熊本県観光連盟

今回のコースは人吉盆地のほぼ真ん中に位置する人吉駅からスタートします。
少し変わった「人吉(ひとよし)」という地名の由来は、一説には古代の熊本地域から鹿児島方面へ向かう際、交通の要衝の人吉に宿が置かれ、それを「ひとよし」と呼んだことが由来ともいわれています。

人吉の町は熊本県南東部地域の中心都市で、古くから南九州地域から熊本などの九州中部地域を結ぶ交通の要衝として栄えてきた歴史を持っています。

現在においても人吉は交通の要衝となっており、九州を縦に貫く九州自動車道が市内を通るほか、八代駅から鹿児島県の隼人駅を結ぶ「肥薩線」の途中駅ともなっています。(2024年7月時点で肥薩線は八代駅-人吉駅間で不通、朝夕に限りタクシー代行輸送がされています。)

現在の人吉へのアクセス方法としては九州自動車道を利用する方法や、博多や熊本、宮崎や鹿児島など九州各都市からの高速バスを利用する方法が考えられます。

大雨による被災前には熊本-人吉駅間に特急列車の運行があったほか、SL列車の運行もされており人吉駅には様々な列車が行きかっていました。
路線が復旧した際にはぜひ鉄道でも訪れてみましょう。

名称人吉駅
住所〒868-0008
熊本県人吉市中青井町
関連するサイトhttps://www.jrkyushu.co.jp/railway/station/1191819_1601.html

↓徒歩で5分程度

10:05 人吉鉄道ミュージアムMOZOCAステーション868

人吉鉄道ミュージアムMOZOCAステーション868
©熊本県観光連盟

人吉駅からほど近い場所には、レンガ造りのオシャレな外観が特徴の「人吉鉄道ミュージアムMOZOCAステーション868」があります。
博物館全体のデザイン監修をJR九州の特急列車のデザインを多く手掛ける「水戸岡鋭治」氏が手がけており、鉄道好きだけでなく氏のファンも多く訪れるようです。

館内では肥薩線の歴史を感じられる、駅員さんの制服や当時の鉄道機材など様々な資料が展示されているほか、子供向けの展示やアトラクションも充実しています。

展示の中でも特に人気があるのが小さなSLに乗ることができる「ミニトレイン」で、赤地に金色で装飾を施す「水戸岡的」なデザインの小さな機関車は、そのデザインと速さから「大人の人も喜んで乗車する」ことで話題となっています。

名称人吉鉄道ミュージアム
MOZOCAステーション868
住所〒868-0008
熊本県人吉市中青井町343-14
電話番号0966-48-4200
営業時間9:00-17:00
水曜日定休
入館料無料
(ミニトレインやレールバイクなど有料アトラクションあり)
関連するサイトhttps://kumamoto.guide/spots/detail/12869

↓徒歩5分程度

11:00 青井阿蘇神社

青井阿蘇神社
©熊本県観光連盟

平安時代初期の大同元(806)年、阿蘇神社の神主だった人物がこの地に阿蘇神社の神様を勧請して祀ったことを起源とする、歴史のある神社です。

神社の特徴はなんといっても楼門や拝殿など、境内の多くの建物がかやぶき屋根となっていることで、現在境内に残る多くの建物は、江戸時代初期の慶長10(1610)から人吉藩初代藩主の相良長毎の発起によって造営されたものです。

建物の様式には人吉周辺の球磨地域に受け継がれていた技法が見られるほか、建設当時の安土桃山時代を象徴する装飾性も見られ、人吉や球磨地方だけでなく以後南九州地域の神社建築に大きな影響を与えました。
それらが評価されたことで、本殿や拝殿、楼門などの建築物は国宝指定を受けています。

また、令和5(2023)年には神社敷地内に世界的建築家・隈研吾氏設計による「青井の杜(もり)国宝記念館」がオープン、目を引く木造の建築は「保守と進取」を両立する人吉の風土そのものが表現されているかのようです。

名称青井阿蘇神社
住所〒868-0005
熊本県人吉市上青井町118
電話番号0966-22-2274
参拝時間9:00-17:00
参拝料無料
関連するサイトhttps://aoisan.jp/

↓徒歩10分程度

12:00 うなぎ専門店 しらいし

うなぎ専門店しらいし
©熊本県観光連盟

人吉のグルメには、球磨黒牛や鮎料理が挙げられるほか、鰻料理が名物として挙げられます。
球磨川の流れで育った鰻はふわふわで厚みのある身が特徴で、うなぎ専門店 しらいしではさらにその鰻を直炭火焼き、あっさりとした秘伝のタレをかけて提供しています。

周辺にはうなぎ専門店 しらいしのほかに人気鰻店が多く並んでいるので、どのお店にするか悩んでしまいます。
事前予約なし、順番に席へご案内するというお店も多いため、お昼時にはどのお店も混雑が予想されます。少し時間をずらして来店することもご検討下さい。

名称うなぎ専門店 しらいし
住所〒868-0003
熊本県人吉市紺屋町126-2
電話番号0966-22-2450
営業時間11:30-14:00
不定休
関連するサイトhttps://hitoyoshi-cci.or.jp/eat/unagisennmonnten-shiraishiunagi/

↓徒歩15分程度

13:00 繊月酒造

繊月酒造
©熊本県観光連盟

人吉といえば米焼酎が有名で、まちには多くの酒造会社が軒を並べています。
今回紹介するのは、人吉のまちを600年以上治めた領主、相良氏の居城「繊月城(人吉城)」の名を冠する繊月酒造です。

焼酎といえばまずは芋、次いで麦を多く見かけますが、熊本県での需要は圧倒的に米焼酎が多く、そのほとんどが人吉を中心とする球磨地方で造られています。
その理由は球磨地方の風土にあり、1つは球磨川による豊かな水と寒暖差のある気候が稲作に適していたこと、そして焼酎文化の九州にあって良質な麹菌の発見ができたことにあるといわれています。

特に江戸時代を通して相良氏が治めたことで、人吉には年貢の対象とならない多くの「隠し田」があったといわれ、隠し田で収穫されたお米が焼酎となったとされます。

繊月酒造はそうした人吉を代表する米焼酎ブランドとして、地元シェアナンバーワンといわれる高い知名度を持っている酒造会社です。
様々な新商品の開発にも積極的で、女性でも手に取りやすい焼酎なども店頭に並んでいます。
事前に連絡すれば工場内の説明・試飲付きの蔵見学にもご案内いただけます。

名称繊月酒造株式会社
住所〒868-0052
熊本県人吉市新町1
電話番号0966-22-3207
営業時間9:00-17:00
関連するサイトhttp://www.sengetsu.co.jp/

↓徒歩5分程度

14:00 人吉城跡

人吉城跡
©熊本県観光連盟

人吉城は鎌倉時代から江戸時代の終わりまで、長く人吉と球磨地方を治めた相良氏が35代に渡って居城としたお城です。

相良氏は元々は遠江(現在の静岡県西部)、相良荘の出身ですが、鎌倉時代初期源頼朝に人吉の地頭に任命され、この地に赴任しました。
相良氏の赴任当初、現在の人吉城の元となる場所には平家方に与した武士が陣取っていたものの、これを謀殺して城を我が物としたという逸話が残っています。

元々あった城を相良氏が改築する際、城から三日月模様の入った石が出土したと伝わり、この逸話から人吉城には「繊月城」「三日月城」の別名が伝わっています。

その後戦国時代に入ると、相良氏は球磨地方を統一しますが、熊本県の北部は大友氏が、南の鹿児島には島津家といった勢力があり、相良氏はこれら大勢力の狭間で難しい舵取りを迫られます。

戦国時代の後期には相良氏は島津家に臣従、豊臣秀吉の九州征伐時には島津方として豊臣方と戦いましたが、戦後交渉によって城と人吉の領有を認められます。
関ケ原の戦い時にも相良氏は当初西軍として参戦しましたが、関ケ原の本戦で西軍敗北後には東軍へ内応、家康から人吉の領有を安堵されて、幕末にまで家名を繋いでいくこととなります。

城は江戸時代の二度の大火によって構造物の多くを失ったほか、明治時代の西南戦争では西郷方の拠点となり、その際の戦火にも巻き込まれています。

名称人吉城跡
住所〒868-0051
熊本県人吉市麓町
関連するサイトhttps://www.city.hitoyoshi.lg.jp/kanko/kankojyoho/38694

↓徒歩10分程度

15:10 人吉温泉 元湯

人吉温泉元湯
©熊本県観光連盟

ここまで来ると人吉の散策も後半、地元の人にも愛される温泉公衆浴場で、街歩きでかいた汗を流しましょう。

ここ人吉温泉元湯は昭和9(1934)年創業の公衆浴場です。創業者が夢の中で温泉が出る光景を見、人吉城の近くを掘ってみると本当に温泉が出たので開業したといいます。
弱アルカリ性の泉質をしており、入浴する地元の人からは「湯冷めしにくい」との声もあります。
ゆっくりとくつろぎの時間を過ごした湯上りには、目の前の球磨川の流れを見ながら、ゆっくりと駅方面に向かいます。

名称人吉温泉 元湯
住所〒868-0051
熊本県人吉市麓町9-4
電話番号0966-32-8632
営業時間7:00-12:00,14:00-22:00
入湯料大人:300円
関連するサイトhttps://hitoyoshikuma-guide.com/2019/02/18/hitoyoshionsen-motoyu/

↓徒歩20分程度(バス運行あり)

16:15 人吉温泉物産館

©熊本県観光連盟

人吉駅の近くまで戻ると、レストランを併設した大きな人吉温泉物産館が見えてきます。
人吉のお土産はここで揃います。

人吉の名物には米焼酎のほか、きくらげや鮎などの川魚が挙げられます。
また、民芸品では東北のこけしと比較される「きじ車」が特に有名です。野鳥のキジを模して木を削り、そこに彩色をして車を据えた玩具で、主に屋外で牽引して遊ばれます。
きじ車は南九州の広い範囲で見られる玩具ですが、地域ごとに違いがあり、人吉のものは額に「大」と記され、胴体部に椿の装飾が施されます。

これらは「大」の文字が京都の大文字焼きに、椿の装飾も平家の赤旗にちなむともいわれ、この地に根ざした平家の落人が由来に関係しているという話があります。

名称人吉温泉物産館
住所〒868-0005
熊本県人吉市上青井町120-4
電話番号0966-22-1123
営業時間9:00-17:00
不定休
関連するサイトhttps://hitoyoshikuma-guide.com/2019/03/03/hitoyoshionsenbussankan/

16:30 お疲れさまでした。

3.おわりにーコースの注目ポイントー

きじ車
人吉のきじ車

ここまでモデルケース形式で人吉のおすすめスポットをご紹介しました。

人吉は熊本県内でも南の山間部に位置しており、「通りがてらに立ち寄る」ことが中々難しいまちではあります。

しかし、そうした立地、地理的要因は人吉に独自の文化を造り、そして現在まで残してきました。多くの文化財だけでなく、「ウンスンかるた」や「球磨拳」など、ここにしかない文化が人吉にはそのままに残されています。

小説家の司馬遼太郎は人吉を「日本でもっとも豊かな隠れ里」と評しており、したたかに外来の文化を吸収しながら独自性を保つ人吉を端的に表現しています。
ぜひ実際に自分の足で人吉を訪れ、どことも違う人吉独自の風土や文化を楽しんでみてください。

岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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