熊野市で感じる地球の神秘、ダイナミックな紀南の自然に親しむコース(三重県熊野市)

5 min

1.はじめにーモデルコースの概要ー

鬼ヶ城
©岩本まさき

この記事では三重県南部、紀南地域のまち熊野市のスポットをまとめています。
モデルコース形式で見どころをご紹介していますので、そのままのスケジュールで周ってみるのはもちろん、和歌山県側に広がる『南紀熊野ジオパーク』のジオスポットの数々を訪れてみたり、熊野駅から歩ける範囲のスポットを徒歩で周ってみる、などのカスタマイズも可能です。

このモデルコースで訪れる三重県熊野市は熊野灘に面した海沿いのまちです。
かつては『奥熊野代官所』が設置され、現在の三重県南部から和歌山県南部地域の行政の中心地だった歴史を持っています。

熊野市の含まれる三重県南部地域は、明治時代まで紀伊国に含まれていた地域に当たります。特に和歌山県南部から三重県南部にまたがる紀南地域は「熊野」や「牟婁(むろ)」といった地域名で呼ばれ、現在においても熊野市など三重県南部地域では新宮市など和歌山県南部のまちとの強いつながりを感じることができます。

これら紀南の地域は古くから豊かで雄大な自然のある地域として知られており、人々はそれらの自然に神性を感じ、信仰の場としてきました。
周辺地域には現在も多くの社寺とそれらを結ぶ参詣道が残されており、その多くが世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』に指定されています。

また、豊かで雄大な自然の景観は地学的・観光的な価値、見ごたえもあり、これら景観の維持と利用の促進のため、周辺地域の広い範囲が昭和11(1936)年に『吉野熊野国立公園』に指定されているほか、紀南地域の中でも和歌山県側の広い範囲が南紀熊野ジオパークに指定されています。

2.モデルコース

ルート:熊野市駅→鬼ヶ城→獅子岩→道の駅熊野・花の窟→七里御浜→花の窟神社→花のいわや亭→雨滝→大丹倉
交通手段:
所要時間:6時間~

9:00 熊野市駅

特急南紀(HC85)
特急南紀のイメージ

旅のスタートは熊野市駅からです。

熊野市駅は名古屋と新宮・那智勝浦駅を結ぶ特急列車「南紀」が停車するほか、高速バスの発着があります。
それぞれの本数は多くはありませんので、事前に調べてアクセスするのがおススメです。

また、レンタカーを使用する場合、熊野市駅前にレンタカー店は多くありません。和歌山県の新宮駅前や三重県側であれば伊勢市や松阪市などで借りていくのが無難です。

名称熊野市駅
住所〒519-4324
三重県熊野市井戸町
関連サイトhttps://railway.jr-central.co.jp/station-guide/tokai/kumanoshi/index.html

↓車で5分程度

9:10 鬼ヶ城

鬼ヶ城
©岩本まさき

熊野灘の激しい波に削られてできた海食洞が、地震によって断続的に隆起したことでできあがった、階段状の大岩壁が見られる絶景スポットです。
鬼ヶ城センターに車を停車し、そこから遊歩道で海に臨む遊歩道を散策しながら景観を楽しむことができます。

「鬼ヶ城」という名前は、平安時代初期にこの場所を根城にして暴れ、鬼と恐れられた海賊「多娥丸(たがまる)」の伝説に由来しています。
紀州で暴れる鬼の話を聞いたことで、蝦夷の征伐や鈴鹿山で鬼退治をした将軍、坂上田村麻呂が当地を訪れ、仏の加護によって鬼を倒したという伝説が伝わります。

鬼ヶ城千畳敷
©岩本まさき

鬼ヶ城の岩盤を縫うように遊歩道が整備されており、道中では「千畳敷」や「猿戻し」、「鬼の風呂桶」、「蜂の巣」などユニークに名付けられた特徴的な岩々を見ることができます。
他では撮れない写真撮影を楽しめるスポットですが、遊歩道の幅は広くなく、階段部分も多いため、訪れる際は足元に十分注意してください。スニーカー履きで訪れるのが良いでしょう。

鬼ヶ城センターでは買い物や食事を楽しむことができ、中でもご当地柑橘である「新姫(にいひめ)」を使った製品はここでしか食べられないものが多くおススメです。

名称鬼ヶ城
住所〒519-4323
三重県熊野市木本町1835-7
電話番号0597-89-1502
関連サイトhttps://onigajyo.mie.jp/

↓車で5分程度

11:00 獅子岩

獅子岩
提供:三重フォトギャラリー

鬼ヶ城と同様に、海食と隆起によってできあがった高さ約25m、周囲約210mの奇岩です。南側に位置する奇岩と共に、ここから川の上流に位置する大馬神社の狛犬とされてきた歴史を持っており、現在も大馬神社には狛犬は設置されていません。

鬼ヶ城や七里御浜と同様に吉野熊野国立公園の一部となっているほか、世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道の伊勢路の構成資産に指定されています。

名称獅子岩
住所〒519-4324
三重県熊野市井戸町
関連サイトhttp://kumano-kankou.com/?p=20

↓車で2分程度

11:20 道の駅熊野・花の窟

熊野古道や花の窟をはじめとする観光地の案内、及び観光情報の拠点として、道路利用や、観光客への休憩場所となっている道の駅です。
施設内では地域の特産品などが販売されており、古代米を使用したお団子などを楽しむことができます。

ここに車を停めて、周辺を観光しましょう。

名称道の駅熊野・花の窟
住所熊野市有馬町137
電話番号0597-88-1011
営業時間10:00~17:00(季節により変更有り)
関連サイトhttps://www.cbr.mlit.go.jp/michinoeki/mie/mie17.html

↓徒歩で1分程度

11:40 七里御浜(しちりみはま)

七里御浜
©岩本まさき

熊野市から隣の紀宝町までの七里、約25km続く、日本一の長さを誇る砂礫海岸です。
目の前に熊野灘が広がる茫洋とした風景が印象的で、特に朝日の美しいスポットとして知られています。

海から吹き抜ける強風を遮るために砂浜に沿って松林が植えられており、さらに海浜植物も豊かに見られます。その景観は昭和57(1982)年に「21世紀に残したい日本の自然100選」に選定されているほか、「日本の白砂青松百選」にも選ばれています。

名称七里御浜(しちりみはま)
住所〒519-4325
三重県熊野市木本町
関連サイトhttp://kumano-kankou.com/?p=48

↓徒歩で1分程度

12:00 花の窟神社

花の窟神社

日本神話で他の多くの神々に先だって生まれ、夫神の伊弉諾神(イザナギ)と共に日本の国土のほか、伊勢神宮の天照大神など多くの神々を産み落とした女神、伊弉冉神(イザナミ)が眠る神社です。
多くの神々を生んだイザナミは、火の神を生んだ際に自らも火傷を負い、その傷がもととなって亡くなります。
この神社は日本書紀においてイザナミが葬られたと伝わる場所で、古くから篤く信仰されてきました。

境内には社殿が無く、特徴的な巨岩がご神体とされてきたことが特徴です。周囲は鬱蒼とした社叢に覆われており、神秘的な雰囲気が漂います。
毎年2月と10月には大祭が行われますが、その際には「御縄掛け神事(おなわかけしんじ)」が行われ、ご神体の巨岩から七里御浜まで綱が引かれます。
この綱はイザナミが産み落とした7柱の自然神達を表しており、イザナミを含む神々に五穀豊穣などを祈るものです。

名称花の窟神社(はなのいわやじんじゃ)
住所〒519-4325
三重県熊野市有馬町130
電話番号0597-89-0100 (熊野市観光協会)
参拝時間20分ほど
参拝料なし
関連サイトhttps://hananoiwaya.com/

↓徒歩で3分程度

12:30 花のいわや亭

三重県熊野市ならではの新鮮な食材を、落ち着ける雰囲気で楽しむことができるお食事どころです。
神社からも近いお店には海の見えるテラス席も併設されており、太平洋の温かな日差しを感じながら食事を楽しむことができます。

店内には大きないけすもあり、魚介をはじめとする紀南地域の新鮮な食材を定食でリーズナブルに楽しむことができます。

名称花のいわや亭
住所〒519-4325
三重県熊野市有馬町205-1
電話番号0597-89-6598
営業時間ランチ 11:00~14:00
ディナー 17:00~22:00
定休日:大晦日・元旦
関連サイトhttps://www.hananoiwayatei.com/

↓車で25分程度

14:00 雨滝

滝のイメージ
滝のイメージ

花のいわや亭付近から和歌山県の飛び地、北山村の方向に三重県道52号を30分ほど運転した山中にある滝です。
落差20mの迫力のある滝で、深い滝つぼには清らかな水が湛えられています。

滝の名前はこの滝で雨乞いの儀式がされたことに由来しており、日照りの時には付近の村人達が寺の鐘を滝つぼに漬け、降雨を祈祷したという話が伝わっています。

滝つぼまで近づけることが魅力ですが、アクセスルートの三重県道52号は界隈で「険道(けんどう)」とも評される道です。
ほぼ全線が1.5車線程度の道幅であるため、車の離合の際にはバックしての道の譲り合いも発生します。山道の運転にある程度慣れた方の運転で訪れるようにしてください。

名称雨滝
住所〒519-4327
三重県熊野市育生町
関連サイトhttps://www.city.kumano.lg.jp/tourism/?content=284

↓車で20分程度

14:40 大丹倉(おおにぐら)

大丹倉

高さ200m、幅500mに及ぶ大岩壁です。
山中の聖地の一つとして、かつては修験者達が厳しい修行を行った場所でもあります。

「大丹倉」という名前は赤く巨大な断崖絶壁を表すもので、麓から見上げると鉄分の含まれた岩肌が赤みがかって見えます。
下から見上げて岩壁のスケールを体感するのももちろんおススメですが、訪れた際は大丹倉の頂上へ登って風景を楽しんでみてください。
駐車場から5分ほどの山道を登るだけで、前方180°に広がる紀伊山地の絶景を楽しむことができます。

大丹倉の頂上部には柵などは設置されていません。訪れる際は必ずグリップ力のある靴で訪問し、雨の日の訪問は避けた方が無難です。

名称大丹倉(おおにぐら)
住所〒519-4446
三重県熊野市育生町赤倉171
関連サイトhttp://kumano-kankou.com/?p=65

15:00 お疲れさまでした。

3.おわりにーコースの注目ポイントー

鬼ヶ城センター
©岩本まさき

ここまでモデルケース形式で熊野市のおすすめスポットをご紹介しました。

熊野市を含む紀南地域には特急列車が運行されており、高速道路の整備も進んでいるものの、他の地域からは物理的距離があります。

しかし、この地域は本文中で紹介した通り、スケールの大きな自然を楽しめる地域です。そしてその自然を背景に豊かな文化が生まれ、現在まで残されてきた地域でもあります。

今回記事内では紹介できませんでしたが、渓谷美の美しい奥瀞などにもアクセスしやすく、「自然」にフォーカスしても数多くの訪問スポットが挙げられます。

そして本文、ブログの中でも多く取り上げている世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産も多く、鬼ヶ城や花の窟のほか、風伝峠(ふうでんとうげ)などでは昔ながらの熊野古道の風情を楽しむことができます。

春本番も近づく今、温暖な熊野へ訪れるのはいかがでしょうか。クマノザクラの開花の時期もそろそろ近づいてきています。

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