1、「鮒ずし」とは
現在一般に「寿司」というと、酢飯の上に刺身がのったものが想像されます。
しかし、こうした寿司の歴史は江戸時代以降に生まれたもので、それまでの寿司は「なれずし」、魚肉を米と共に保管することで乳酸発酵させて長期保存を可能とする食べ物、調理方法でした。
なれずしの調理方法はタイ北部から中国雲南省にかけての地域をルーツに、弥生時代に稲作と共に日本へ伝来したとされ、以降日本各地へなれずしの製法が伝わっていきました。
これらは貴重なたんぱく源を長期保存する技術として重宝され、現在でも海沿いの地域はもちろん、内陸の地域でも淡水魚を使用したなれずしの文化が各地に残っているのがわかります。
各地に根差したなれずしは正月や秋祭りなどの祝いの席(ハレの席)で食されている例が多く見られ、これは「日本三大なれずし」と呼ばれる秋田のはたはた寿司、和歌山紀中地域のなれずし、滋賀県の鮒ずしにも共通しています。
不思議なのが水域沿いの魚のとれる地域であっても、わざわざハレの食事としてなれずしを作っていることで、この理由は個人的に気になるところです。
自分としては単なる保存技術としてでなく、ひと手間を加えることで魚のうまみが増す調理方法としてなれずしが各地へ受け入れられていった結果なのではないか。とも思います。
それらなれずしの中でも特に高い知名度を誇るのが今回取り上げる「鮒ずし」です。
鮒ずしは日本最大の湖を県の真ん中に抱える滋賀県の郷土料理で、琵琶湖で育った産卵前のニゴロブナを主に用いてつくられます。
製法としては春にとらえた鮒を下処理し、夏まで塩漬け、塩抜きをした鮒と炊いた米を樽の中に交互に詰めて保管します。そうすると樽の中での発酵によって鮒ずしが完成、できあがった鮒ずしは乳酸発酵によって腐敗が防止されるだけでなく、うまみ成分が増しています。
このように作られた鮒ずしは、地元滋賀県ではハレの席の食事のほかに病人食としても親しまれてきました。
その一方で、鮒を骨まで発酵させて作られる鮒ずしは独特の臭いと味があり、地元においても好き嫌いが分かれています。
2、鮒ずしを食べる
私が鮒ずしをはじめて食べたのは、2年ほど前に大津へ訪れた際のことでした。
その時は大津市を三井寺へ向かって歩いており、そこで旧東海道の道中にある鮒ずしの店に立ち寄ったのがきっかけです。
店内で鮒ずしのことを色々と教わり、かっていざ開封すると普段食べている早ずしとは異なるコクのある酸っぱい臭いがし、一瞬気圧されます。
たしかに臭いは評判通りのもの。
しかし、いざ口に運んでしまえば、その力強く深みのある味わいは間違いなく他の食品にはない旨さを感じることができます。
さらに、酒好きの方にお勧めなのが甘味のある純米酒とあわせて食べること。ぜひ滋賀の純米酒とのマリアージュを楽しんでもらいたいところです。
当ブログでは大津市のモデルコースも載せているので、ぜひご参考にしてください。