日本一の酒どころ、灘五郷(西宮郷・今津郷)を飲み歩くコース(兵庫県西宮市)

5 min

1.はじめにーモデルコースの概要ー

日本酒

この記事では、兵庫県南東部、阪神地域の沿岸部にあり、日本酒の生産量が最も多い地域として知られる灘五郷地域のうち、西宮市に広がる「西宮郷(にしのみやごう)」「今津郷(いまづごう)」エリアのおススメスポットをモデルコース形式で紹介しています。

「灘五郷」とは阪神地域の沿岸部、神戸市灘区から兵庫県西宮市までの地域に広がる5つの酒蔵密集地帯の総称です。
灘五郷に含まれる5つの郷は西側から神戸市灘区の「西郷(にしごう)、東灘区の「御影郷(みかげごう)」、「魚崎郷(うおざきごう)」、そして西宮市の「西宮郷」と「今津郷」の地域に分かれており、辛口で知られる灘の酒を醸造しています。

この地域で造られる日本酒は国内生産量の約25%を占めており、灘五郷地域を横断して歩くと、スーパーや居酒屋でおなじみの有名メーカーから、日本酒マニアが唸る小規模なものまで様々な酒蔵が軒を連ねていることに驚かされます。

この地域で酒造業が発達したのにはいくつかの理由がありますが、六甲山の麓にあることでミネラル分が多く鉄分が少ない酒造に適した湧水に恵まれていることや、急流を利用した水車での精米がしやすかったこと、大阪などに近く原料米の買い付けがしやすいことなどが挙げられるほか、醸造した酒を一大消費地で江戸に舟運で輸送しやすかったということも一因となりました。

江戸時代後期の文化文政期には江戸にもたらされる日本酒のうち50%を灘五郷産が占めていたことがわかっており、その頃には灘の酒の名は広く全国へと響いていました。

時代が下ると戦時中の空襲や阪神淡路大震災の被災を受けて蔵元の廃業が進みましたが、これら苦難を乗り越えた蔵元では酒造技術の近代化をすすめると共に、地域との協力も進められ、地元に根ざした酒蔵として今も灘五郷のブランドを守っています。

今回のモデルコースでは、これら灘五郷のうち東部エリア、西宮市に所在する西宮郷と今津郷の酒蔵を中心に訪れていきます。
灘五郷エリアは、地域を横断して阪神電車や阪神高速、国道43号が通っており、大阪や神戸から容易にアクセスをすることが可能です。

今回紹介する酒蔵では、どの蔵元でも日本酒の試飲体験が可能な為、モデルコースを徒歩周遊を想定して作成しています。
移動距離は阪神電車の駅間で1駅程度あるため、荒天の際などは無理をせず、タクシーの利用なども考慮して周遊を楽しんでみてください。

2.モデルコース

ルート:阪神西宮駅→西宮神社→酒ミュージアム(白鹿記念酒造博物館)→白鹿クラシックス→白鷹禄水苑→日本盛 酒蔵通り煉瓦館→大関甘辛の関寿庵→阪神今津駅
移動手段:徒歩
所要時間:4時間~
(火曜日はお休みの施設があるため訪問できません)

11:00 阪神電車西宮駅

阪神西宮駅

ツアーの始まりは阪神電車の西宮駅からスタートします。
西宮駅は大阪梅田と神戸三宮間を結ぶ阪神本線の駅で、特急を含むすべての列車が停車します。
神戸からも大阪からも30分以内でのアクセスが可能なので、ゆっくりと向かうことができます。

名称西宮駅
住所〒662-0973
兵庫県西宮市田中町1
関連するサイトhttps://www.hanshin.co.jp/station/nishinomiya.html

↓徒歩10分程度

11:10 西宮神社(20分程度滞在)

西宮神社

まず向かうのは駅から10分程度の場所にある神社、西宮神社です。
「えびす総本社」として知られている神社で、全国のえべっさん、恵比寿神を祭る神社の総本社として知られています。

元々は漁業の神として信仰されていましたが、鳥居前の西宮の町が西国街道の宿場町として栄えるようになると、商売の神としても信仰を集めるようになっていきました。
現在でも祭礼日の毎年1月10日前後の「十日えびす」の際には全国から多くの参拝客が訪れるほか、10日早朝に行われる「福男神事」でも知られています。

西宮神社は灘五郷の酒蔵からの信仰を集めてきた歴史を持っており、現在でも境内には奉納された日本酒の菰樽が多く見られるほか、毎年秋には西宮の日本酒を楽しむ「西宮酒ぐらルネサンス」の会場にもなっています。

名称西宮神社
住所〒662-0974
兵庫県西宮市社家町1-17
電話番号0798-33-0321
参拝時間9:00-17:00
参拝料なし
関連するサイトhttps://nishinomiya-ebisu.com/

↓徒歩15分程度

11:45 白鹿記念酒造博物館(40分程度滞在)

西宮神社から南に下ると、酒蔵が並ぶエリアへと進んでいきます。
さっそく酒蔵めぐりを始めたいところですが、その前に日本酒が造られる流れや歴史についても学んでみましょう。

白鹿記念酒造記念館は、「白鹿(はくしか)」のブランド名で知られる酒造会社、辰馬本家酒造が運営する博物館です。
博物館の建物は2つあり、企画展示とさくら資料室などからなる「記念館」と、明治時代に建築された旧酒蔵をそのまま展示スペースにした「酒蔵館」からなっています。

酒蔵館の内部は、この蔵で日本酒が造られていた頃の雰囲気をそのままに残しており、かつての酒造道具が展示されているほか、等身大の人形や映像によって、酒造りの行程を詳しく知ることができます。

名称白鹿記念酒造博物館
住所〒662-0926
兵庫県西宮市鞍掛町8-21
電話番号0798-33-0008
営業時間10:00-17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日、連休に含まれる場合は連休明け休館)、年末年始・夏期休暇
入館料一般:500円
関連するサイトhttps://sake-museum.jp/

↓徒歩1分以内

12:25 白鹿クラシックス(20分程度滞在)

白鹿クラシックス

博物館での展示を楽しんだら、いよいよお待ちかねの日本酒テイスティングタイムです。
白鹿クラシックスは辰馬本家酒造が運営している酒蔵レストランです。
お昼ご飯を楽しむことができるほか、併設されている売店で日本酒の購入や試飲をすることができます。

銘柄にもよりますが、白鹿は「香りが豊かですっきり、飲みやすい」という評価が聞かれるお酒です。
つい進みすぎてしまいそうになりますが、まだまだ日本酒試飲の街歩きは始まったばかり、注意して次の酒蔵へ進みましょう。

名称白鹿クラシックス
住所〒662-0926
兵庫県西宮市鞍掛町7-7
電話番号0798-35-0286
営業時間10:00~18:00
定休日:火曜日
関連するサイトhttps://classics.hakushika.co.jp/

↓徒歩5分程度

12:50 白鷹禄水苑(20分程度滞在)

白鷹禄水苑

2つめの試飲は、「白鷹(はくたか)」のブランドで知られる白鷹株式会社が運営するレストラン、白鷹禄水苑(はくたかろくすいえん)で楽しみます。
試飲を楽しめるのはもちろんですが、ここには伝統の灘酒の技法を伝える「集古館」、昔の暮らしがわかる「暮らしの展示室」があり、それぞれ無償で見学できるのも嬉しいポイントです。

白鷹は白鹿の分家として創業した当時より「超一流主義」を掲げ、ひたすらに品質向上に努めてきた酒蔵です。
「もっとも灘らしい酒」として白鷹をあげる料亭なども多く、濃淳で厚みのある味わいはとても印象的です。

名称白鷹禄水苑(はくたかろくすいえん)
住所〒662-0926
兵庫県西宮市鞍掛町5-1
電話番号0798-39-0235
営業時間11:00~19:00
第1・3水曜日
関連するサイトhttps://hakutaka.jp/shop.html

↓徒歩10分程度

13:20 日本盛 酒蔵通り煉瓦館(50分程度滞在)

酒蔵通り煉瓦館

白鷹禄水苑から東へ真っすぐ、酒蔵通りと呼ばれる通りを歩いていくと、次の目的地である酒蔵通り煉瓦館へ到着します。

酒蔵通り煉瓦館は日本盛株式会社が運営する、レストランとショップ、ガラス工房の入った日本酒情報の発信基地です。このモデルコースでは、ここで少し遅めの昼食を取りましょう。

昼食後にはショップで試飲を楽しみます。
日本盛は灘の酒蔵の中では明治創業の新しい会社、それ故に常にチャレンジをしてきており、例えば「生酒ボトル缶」の斬新でフレッシュな味わいはとても印象的です。
他の酒も日本酒の美味しさを感じやすく、すっきりとした味わいが感じられます。

名称日本盛 酒蔵通り煉瓦館
住所〒662-0921
兵庫県西宮市用海町4-28
電話番号0798-32-2525
営業時間11:00~21:00
関連するサイトhttps://www.rengakan.com/

↓徒歩10分程度

14:20 大関甘辛の関寿庵(20分程度滞在)

関寿庵

酒蔵通り煉瓦館から、さらに酒蔵通りを東へ進むと、灘五郷の最東端、今津郷のエリアへ入ってきます。
このエリアでは現在「大関」と「扇正宗」の2つの酒造会社があり、特に大関は「辛丹波」や「大関ワンカップ」など居酒屋やコンビニでもなじみ深い銘柄を提供する酒蔵として広く知られています。

今回立ち寄るのは大関株式会社が運営する甘味処、ショップの「関寿庵(せきじゅあん)」で、ここでは酒造会社ならではのスイーツと日本酒のどちらも楽しむことが出来ます。

大関の酒には安いイメージを持っている方も多いのではないかと思いますが、それは大関株式会社が「魁」の精神を持って、日本酒がより親しまれるように挑み続けてきたからこそ。
大関の酒造りには、酒造技術を近代化させながら酒にコクと濃厚さを出す「味醴製法」が用いられており、コクがありながらもどんなものとでも合うような柔らかさがあります。

名称大関甘辛の関寿庵
住所〒663-8227
兵庫県西宮市今津出在家町3-3
電話番号0798-32-3039
営業時間10:00~18:00
関連するサイトhttps://sekijuan.ozeki.co.jp/

↓徒歩10分程度

14:50 阪神今津駅到着!お疲れさまでした!

3.おわりにーコースの注目ポイントー

ここまでモデルケース形式で西宮市域の灘五郷おススメスポットをご紹介しました。

このモデルコースで紹介したもの以外にも、西宮氏から神戸市にかけてのエリアには数多くの酒蔵があります。
他のエリアと異なり、酒蔵どうしが近い距離で密集しているため、飲み比べを楽しむことができるのは灘五郷エリアの楽しい点です。

試飲については各酒蔵で年中楽しむことができますが、特に楽しいのはイベントの時期です。秋になると先に紹介した「酒ぐらルネサンス」や「灘の酒蔵探訪」といったイベントがあるほか、新酒ができる2~3月には灘五郷の各酒造会社で「蔵開き」が行われ、蔵開き限定酒を酒造会社の敷地内で楽しむことができます。

魅力あふれる灘五郷エリアは、お酒に興味があるあなたに是非一度訪れてもらいたいエリアです。

岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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