波上宮を参拝する(沖縄県那覇市)

3 min

1.はじめにー波上宮についてー

波上宮と波上ビーチ

この記事では沖縄県那覇市にある神社、波上宮(なみのうえぐう)をご紹介します。
沖縄総鎮守とされ、現在も多くの参拝者が訪れる神社の歴史と見どころを順番に説明します。

波上宮は那覇市の北西部、臨海エリアに鎮座している神社です。
朱色の社殿の上に琉球赤瓦と漆喰で葺かれた屋根がのる社殿の美しさで広く知られており、参拝者には国内だけでなく海外からの観光客の姿も多く見られます。

神社の歴史は明らかでない点が多いものの、那覇の町から突き出した崖の上という立地から、元々遥かな「ニライカナイ(沖縄における神の世界、冥界、他界)」の神々に祈りを捧げる場所、信仰の地であったのではないかとも考えられています。

波上宮はその後琉球王国時代には「当国第一の神社」として、国王が自ら参拝するなど崇敬を集めました。また、現在においても沖縄を代表する神社として知られており、特に正月初詣時の混雑はテレビで取り上げられることもしばしばです。

2. 由来と歴史

波上宮境内
©岩本まさき

波上宮の創建の時期について、詳細な時期はわかっていません。

神社の略記には「遥か昔からの祈りの聖地がこの波の上の崖端であり、ここを拝所として日々の祈りを捧げた」とあります。
神社の背後には遥かに東シナ海が広がっており、そうした背景があったのかもと感じさせます。

これとは別に神社の略記には神社の鎮座伝説も紹介されています。
「昔ある人が釣りをしていると、砂浜で不思議な“ものをいう石”を得た。以降彼はこの石に祈って豊漁を得ることができた。彼はこの石をとても大切にしていたが、それを知った神々に石を奪われかけて波上まで逃れ、そこで石より
“吾は熊野権現である。この地に社を建てて祀れば国家を鎮護する”
との託宣を得て、これを王府に奏上して社殿が整えられた。」
というものです。

沖縄と熊野信仰の関係は深く、波上宮を含む沖縄の8つの代表的な神社、「琉球八社」のうち、実に7社が熊野の神々を祀っています。
これら熊野信仰が沖縄に伝わった理由には、熊野信仰がはるか南の海上にある観音浄土「補陀落浄土」を信仰したことが大きく関係しています。
紀伊半島南部にある熊野地域は、山深い半島そのものが修行と信仰の場であるとされたほか、半島のはるか南の海上には観音菩薩が住む「補陀落浄土」が広がるとして、幅広い信仰を受けてきました。
中世に入る頃には、熊野那智の浜辺より小舟に乗り込んで補陀落浄土を目指す荒行「補陀落渡海」も行なわれ、熊野那智からだけでも25人以上がはるか南の海上へと流れていったことがわかっています。

それら僧達全員の足取りは到底わからないものの、少なくともそのうちの一人は熊野地域から沖縄に漂着していることがわかっています。
僧侶の名前は日秀(にっしゅう)といい、戦国時代に沖縄に漂着し、寺社を建立・再建していきます。
沖縄本島には日秀にまつわる寺社が数多く残されており、戦前の古い建築様式を現存させる金武観音寺や、元別当寺であり波上宮敷地に隣接して建っている護国寺などはその例です。

沖縄にたどり着いたことが明確に記録されている補陀落渡海僧は日秀だけですが、日本の太平洋岸各地からは数多くの補陀落渡海僧が船出しており、彼らの一部が沖縄にたどり着き、熊野信仰を沖縄へ定着させたとしても不思議ではありません。

そして、遥かな南の海上に浄土を見出す補陀落信仰は、沖縄に従来あった海の向こうの異界思想、ニライカナイ信仰とも似通った部分があったために、沖縄で受容されて信仰として定着していったのではないでしょうか。
そう考えると、ニライカナイへ祈りを捧げる霊地に熊野の神が祀られていることも不思議ではないと感じられます。

3.見どころ

この章では具体的な波上宮とその周辺の見どころについていくつかをご紹介します。

①拝殿

波上宮拝殿
©岩本まさき

沖縄ならではの赤瓦が葺かれ、白漆喰で瓦を固定、建物の前にはシーサーが鎮座する沖縄的な雰囲気を強く感じさせる建物です。
拝殿以外でも境内には沖縄ならではの亜熱帯植物も繁茂しているなど、境内全体に本土の神社とは異なる空気感が感じられるのは、波上宮の大きな特徴です。

第二次世界大戦時の沖縄戦では、拝殿をはじめ境内全体が壊滅的な被害を受けており、現在の本殿は戦後の昭和27(1952)年にハワイの沖縄移民者からの募金によって、拝殿は昭和36(1961)年に本土からの募金によってそれぞれ再建されたものです。

②護国寺

護国寺
©岩本まさき

波上宮の敷地に隣接して建っており、かつては波上宮の別当寺として一体の信仰を受けていたお寺です。
護国寺は14世紀に創建された沖縄でも最古の寺院であり、創建以来琉球国王の勅願寺となってきました。

波上宮同様に沖縄戦によって壊滅的な被害を受けており、現在の境内は別の場所でのバラック造りでの再建を経て、昭和27(1952)年に再興されたものです。

③なんみん祭

毎年5月17日の例大祭とその前後に行われる祭礼で、神幸祭や沖縄角力大会のほか、琉球舞踊、演舞大会、のど自慢大会、ビーチ綱引きなど、様々な催し物が開催されます。

お神輿など日本本土の神社でみられる行事の他に琉球舞踊やエイサーも見ることができる祭礼で、見るだけでも心が躍ります。
沖縄の伝統が感じられる祭礼なので、祭りに時期を合わせての訪問もおすすめです。

4.おわりにー参拝のポイントー

波上宮鳥居
©岩本まさき

ここまで波上宮について説明しました。
波上宮は南国的な雰囲気とアクセスの良さから、近年は国内外から多くの観光客が訪れている神社で、筆者が訪れた時にもひっきりなしにバスが駐車場に入り、多くの海外旅行者が社殿前での記念撮影を楽しんでいました。

また、沖縄・那覇を代表する神社のため、普段から参拝客が少なくはないため、気になる方は朝夕の時間を狙って訪れてみるのも良いのではないでしょうか。

波上宮の歴史や信仰についてもっと詳しく知りたい方は神社隣に立地する護国寺との併せての訪問もおすすめです。

名称波上宮(なみのうえぐう)
住所〒900-0031
沖縄県那覇市若狭1丁目25-11
電話番号098-868-3697
参拝時間9:00-16:30
参拝の所要時間神社のみなら15分程度
参拝料なし
主なアクセス方法旭橋駅から徒歩約15分
関連するサイトhttps://naminouegu.jp/index.html
岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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