うずしおと大塚国際美術館を楽しむ、鳴門海峡満喫コース(徳島県鳴門市)

5 min

1.はじめにーモデルコースの概要ー

©徳島県

この記事では徳島県北東部、大鳴門橋を通じて淡路島・本州と四国を繋ぐまち、鳴門のおススメスポットをまとめています。
モデルコース形式でのご紹介のため、そのままのスケジュールで周ってみるのはもちろん、時間短縮のためにレンタカーを使用したり、それぞれのスポットでの滞在時間をさらに増やしてみるなどのカスタマイズもおススメです。

鳴門の名物として知られる渦潮は、瀬戸内海の潮の干満差によって発生する自然現象です。太平洋から流れ込んだ満潮の潮流は、淡路島にぶつかり、その多くが大阪湾方向へ流れ込みます。
この時、淡路島を挟んで向かいにある播磨灘では干潮状態となっており、この時に播磨灘と紀淡海峡の間の鳴門海峡で海面の高低差が発生、日本一とも呼ばれる速さの潮流と渦潮を生み出します。

鳴門鯛
©徳島県

渦潮が発生する際には海中がかき混ぜられることとなり、この時、海中には豊かな栄養分が混ぜ合わされます。
激しい潮流と豊かな海を有することから、古来鳴門海峡は海産物の豊かなところとして知られ、歯ごたえのある「鳴門わかめ」は奈良時代や平安時代に貢物として献上されていた記録が残ります。
また、この海域で水揚げされる海産物としては「鳴門鯛」も有名で、鳴門海峡の急流の中で育った鳴門鯛は身が引き締まって美味しいといわれます。

そして、渦潮と鳴門海峡が織りなす美しい風景は、中世以降には詩歌や伝説に由来する名所として、人々の間に広まっていきました。
室町時代には「鳴門は竜宮城の東門である」との考え方があったことが『太平記』などからわかり、この時代には人々が渦潮に迫力と畏怖の念を抱いていたことがわかります。

鳴門の渦潮
©徳島県

さらに江戸時代に鳴門海峡が浮世絵などで紹介されるようになると、鳴門は名所・景勝地としての地位を確立していきました。
徳島の藩主蜂須賀家は渦潮観潮のための茶屋を鳴門海峡を臨む場所に建てていたほか、鳴門周辺の製塩業者が労働者を労う会では、遊山の一環として観潮の船が出ていたことも伝わっています。

明治時代に入ると鳴門への観光は本格化し、明治41(1908)年には鳴門公園が整備されました。同年中には皇太子時代の大正天皇も鳴門を訪れており、観光地鳴門の知名度が上がっていき、大正時代以降には旅行ブームによって観潮船や釣り船が盛んに運行されていました。

この時代、本州と四国間の連絡は船でのみ行われていました。
明治22(1889)年に香川県の政治家が瀬戸大橋の構想を語り、大正3(1914)年には徳島県選出の代議士が「鳴門架橋に関する建議案」を国会に提出していましたが、いづれも早急な実現には繋がりませんでした。

しかし、船での連絡は海難事故のリスクと隣り合わせであり、一度の運航で輸送できる量も限られているため、本州・四国間の連絡橋の要望はその後も続きました。
戦後の混乱期には船舶の不足から過積載による船舶運航が常態化、結果として『紫雲丸事故』などの多数の死者を出す海難事故が相次いだことで、連絡橋架橋運動は一気に活発化していきました。

名勝 鳴門
©徳島県

昭和34(1959)年には架橋のための調査が行われ、途中でオイルショックによる延期を挟みながら、昭和51(1976)年には大鳴門橋が着工、そして昭和60(1985)年6月8日、大鳴門橋が開通しました。

この橋の開通によって四国と本州が陸路で繋がることとなり、四国の物流事情は大きく改善しました。しかし、交通の便が良くなったことで新たな危惧も生まれます。
徳島県を代表する企業である大塚製薬工業の当時の社長は、この架橋によって鳴門が素通りされてしまうのではと考え、「人の流れをせきとめるダムの役割として美術館を建てる」ことを決意します。

この直前には社内からの提案によって、鳴門海峡周辺の砂を用いたタイルの製造が開始されており、さらにそのタイルに永遠に変色させずに絵画を陶板に焼き付ける技術開発にも成功していました。
これら技術を活かし、徳島への恩返しをしたいとの思いから、日本最大級の面積を持ち、世界唯一の陶板複製画美術館である「大塚国際美術館」が開館しました。美術館は現在、徳島県を代表する観光地のひとつとなっています。

2.モデルコース

ルート:鳴門公園口バス停→鳴門観光汽船→大塚国際美術館→大鳴門橋架橋記念館エディ→エスカヒル・鳴門→鳴門公園口バス停
交通手段:徒歩、バス
所要時間:6時間~

10:00 鳴門公園口バス停

旅のスタートは鳴門公園口バス停からです。
鳴門公園口バス停は高速バスの停留所であり、大阪や京都、神戸初の高速バスが停車します。
四国の玄関口である鳴門は、特に関西方面からのアクセスが非常に良好で、大阪梅田からは高速バスを利用すると2時間ほどで向かうことができます。

名称鳴門公園口バス停
住所〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦福池
関連サイトhttps://www.shinkibus.co.jp/highway/category/landing_guidance/map_naruto2.html

↓徳島バス「鳴門公園線」に乗車し「鳴門観光港」バス停下車 所要時間約8分・徒歩の場合は30分程度

10:20 鳴門観光汽船

鳴門観光汽船
©徳島県

鳴門観光汽船では2種類の観潮船が運行されており、それぞれ間近から鳴門海峡の急流と渦潮を観潮することができます。
特に小型水中観潮船「アクアエディ」には水面下1mの水中展望室が備えつけられており、船上から見るのとは全くことなる渦潮の景観を楽しむことができます。(※要事前予約)

渦潮は鳴門海峡の潮の干満差によって発生することから、観潮船が運行されていても渦潮が巻いていない時間帯があります。
渦潮が巻くベストタイミングは鳴門観光汽船のサイトからも確認ができるので事前に確認しておき、タイミングが合わない場合は他の施設と訪問の順番を入れ替えて訪問するのがおススメです。

名称鳴門観光汽船
住所〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦大毛264-1
電話番号088-687-0101
運賃わんだーなると運賃:大人 1,800円
アクアエディ運賃:大人 2,400円
出航時刻9:00~16:20
関連サイトhttps://www.uzusio.com/

↓徳島バス「鳴門線」に乗車し「大塚国際美術館前」バス停下車 所要時間約6分・徒歩の場合は20分程度

11:00 大塚国際美術館

美術館
美術館のイメージ

陶器に世界各地の名画を焼き付けた陶板名画を、日本最大級の展示スペースで楽しむことができる美術館です。
世界中の著名で重要な美術品を一挙に見られる美術館として、国内外を問わない人気があり、海外からの観光客の訪問も多く見られます。
平成19(2007)年には当時の館長がローマ法王より「日本にキリスト教文化を紹介した」ことから勲章が授与されており、大塚国際美術館の文化的価値は広く知られています。

美術館へ入ってまず通るのが、システィーナ礼拝堂の内部とミケランジェロの「最後の審判」を写し取った「システィーナ・ホール」で、この空間だけでも一見の価値が十分にあります。
他にもダ・ヴィンチの「モナ・リザ」やゴッホの「ひまわり」といった名画が展示されており、美術好きな方であれば鑑賞時間は1日あっても足りないことと思います。
館内にはレストランやカフェが併設されているので、ここで昼食を取りましょう。

名称大塚国際美術館
住所〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦福池65-1
電話番号088-687-3737
入館料一般:3,300円
開館時間9:30~17:00
関連サイトhttps://o-museum.or.jp/

↓徒歩15分程度

14:30 大鳴門橋架橋記念館エディ

大鳴門橋架橋記念館エディ
©徳島県

大鳴門橋を臨む位置にあり、大鳴門橋の架橋を記念して設置されたミュージアムです。
「渦」と「橋」が展示のテーマとなっており、楽しみながら鳴門海峡について知ることができます。
平成30(2018)年には展示内容のリニューアルがされており、デジタルアクションやVR観光体験などが設置され、ゲームやアトラクション形式の体感できる展示がされています。

名称大鳴門橋架橋記念館エディ
住所〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町(鳴門公園内)
電話番号088-687-1330
入館料大人:620円
営業時間9:00~17:00
関連サイトhttps://www.uzunomichi.jp/eddy/

↓徒歩3分程度

15:30 エスカヒル・鳴門

エスカヒル・鳴門
©徳島県

鳴門公園内にあり、観光用エスカレーターがある展望施設です。
屋上には360°の眺望が楽しめる展望台が設置されており、鳴門海峡はもちろん、小豆島や和歌山までを見渡す絶景を楽しめるスポットとして知られています。

1階部分には売店とカフェが入っており、鳴門のお土産などを購入することができます。

名称エスカヒル・鳴門
住所〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦福池65
電話番号088-687-0222
入館料大人:400円
営業時間9:00~17:00
関連サイトhttps://www.narutokanko.co.jp/eskahill/

↓徒歩2分程度

16:30 鳴門公園口バス停

3.おわりにーコースの注目ポイントー

くるくるなると
©徳島県

ここまでモデルケース形式で鳴門のおすすめスポットをご紹介しました。
鳴門は四国の入り口となる場所のひとつであり、特に関西以東の地域からは四国へのアクセスの際に立ち寄りやすい立地にあります。

今回は鳴門市の中でも鳴門海峡を臨むエリアを中心にご紹介しましたが、鳴門市の他のエリアにも立ち寄ってもらいたいスポットは多くあります。
『鳴門市ドイツ館』はそのひとつで、第一次世界大戦時のドイツ兵捕虜と現地住民の交流を記念したミュージアムです。
鳴門市は日本、アジアでの「第九」初演の地として知られており、これは当時鳴門に存在した収容所のドイツ兵達によって演奏されたものです。

また、令和4(2022)年に開駅された道の駅「くるくるなると」は「体験型食のテーマパーク」をコンセプトとした賑やかな道の駅です。
店内には鳴門市や徳島県の名産品が所せましと並んでおり、道の駅オリジナルのお菓子なども多く販売されているほか、ジップラインや遊具も設置されており、トイレ休憩だけでなく、旅の目的地のひとつになる道の駅です。
筆者は「ごく細けんぴ」を買いましたが、通常の芋けんぴより軽やかな味わいがくせになり、もっと買っておけばと後悔しました。

自然とアート、そして食も楽しめる、鳴門から四国観光をはじめてみてはいかがでしょうか。

岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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