立石寺を参拝する(山形県山形市)

3 min

1.はじめにー立石寺についてー

納経堂

この記事では山形県山形市の中心部から山あいに入った場所にある古刹、立石寺をご紹介します。
立石寺といえば松尾芭蕉の俳句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」が詠まれた場所として知られていますが、現在から1,200年以上前に開かれたとされる東北地方屈指の歴史あるお寺であるほか、高所の岩場の上にあるために境内からは絶景・奇景を楽しめることでも知られています。

俳句が読まれた初夏の頃は境内に青葉が茂り、閑やかな風情を楽しむことができるほか、秋には岩山と境内を彩る紅葉を、冬には雪の岩壁の上にお堂が佇む水墨画のような景色を楽しむことができます。

立石寺の最寄り駅である「山寺駅(やまでらえき)」は県庁所在地の山形駅から15分の場所のため、東京ほか国内各地から新幹線や飛行機などを利用するとスムーズにアクセスすることができます。

2. 由来とまつわる人物

立石寺は、寺伝において平安時代前期の貞観2(860)年に、円仁(えんにん)によって創建されたと伝わっているお寺です。
円仁は第三代の天台座主をつとめ、「慈覚大師」という名でも知られています。

円仁は唐に渡り、弘法大師空海や伝教大師最澄が持ち帰らなかった経典を日本へ多数持ち帰ったことで日本での密教発展に大きく寄与した僧として評価されているほか、唐からの帰国後には関東から東北地方へと広く巡業、数多くの寺を開基、再興しています。

東北地方にある寺の300以上、関東の200以上の寺がこの時に円仁が開基・再興したものと伝わっており、当時まだ仏教が十分に広がっていなかったこれらの地域においていかに円仁が仏教を広めるために尽力し、崇敬を集めたのかが伝わってきます。

これらのお寺の中には立石寺や宮城県の瑞巌寺、イタコの口寄せで知られる青森県の恐山菩提寺など東北の名刹が並ぶほか、東京浅草の浅草寺も円仁を中興としています。

恐山菩提寺

これらの活躍を評価してか、浄土宗の開祖である法然は入定の際に円仁の袈裟をまとったことも伝わっており、最澄や空海らの影に隠れた存在でありながら、密教僧として後世への影響ではひけを取らない。と評価されています。

立石寺には円仁の遺骸が安置されたと伝わる入定窟があり、円仁ゆかりの霊場として崇敬を集めてきた歴史を持っています。

3.見どころ

この章では立石寺の見どころのいくつかを紹介していきます。
立石寺は境内が岩山の上にあり、一番高所にある奥の院まで往復すると約1時間半程度、1,000段以上の石段を登ります。登山靴の準備などは必要ありませんが、時間に余裕を持って参拝してください。

①根本中堂

根本中堂

立石寺全体の本堂にあたるのがこの根本中堂です。
現在の根本中堂の建物は南北朝時代の延文元・正平11(1356)年、東北地方を治めるために山形に入った武将、斯波兼頼が再建したものです。

建築物にあまり用いられることのないブナ材を全体の6割程度に用いていることが特徴で、ブナ材の建築物では日本最古ともいわれます。

堂内には円仁の作とされる木造薬師如来像が祀られています。

②せみ塚

せみ塚

立石寺の境内に入り、山門から仁王門へと石段を登る最中、道の傍らに小さな石碑があることに気づきます。
この「せみ塚」は芭蕉が山寺を訪れ、「閑さや 巖にしみ入る 蝉の声」という句の着想を得た場所と考えられている場所です。
石碑の下には俳句の書かれた短冊が埋められていることが名前の由来となっています。

古くから芭蕉が句に詠んだ蝉の種類は論争の種となってきましたが、芭蕉が立石寺を訪れた時期は旧暦の5月27日(新暦7月13日)であることがわかっており、現在はニイニイゼミであるという説が有力視されています。

この他にも参道には斎藤茂吉など数多くの俳人・歌人らの句碑が残されています。

③五大堂

五大堂

山寺境内の断崖から突き出るように建てられていることが特徴的なお堂は五大堂といいます。
その名前は不動明王をはじめとする五体の明王、五大明王を祀っていることに由来しています。
眼下に山寺と周辺の地域を見下ろす絶景のスポットであり、立石寺へ来た際には立ち寄りたいお堂です。

また、その付近には崖の上に建つ赤い「納経堂」や円仁を祀る開山堂もあり、これらも是非あわせて参拝したいところです。

4.おわりにー参拝のポイントー

ここまで立石寺について説明してきました。
松尾芭蕉の俳句が詠まれたお寺であることばかりがクローズアップされる印象がありますが、岩山の上に建つお堂の数々からは、この地に根差した信仰のひたむきさが感じられたことを覚えています。

1000段に及ぶという石段を登っての参拝で、道中は息がきれましたが、高所にある境内の空気はその分心地よく、爽やかな心持ちで参拝することができます。
ただ、主要な堂を拝するだけでも1時間、境内全体を訪れようとすると1時間半は時間を見ておきたいところなので、訪問の際は帰路の交通手段や時間を考慮して訪れるようにしてください。

名称宝珠山 立石寺(ほうじゅさん りっしゃくじ)
住所〒999-3301
山形県山形市山寺4456-1
電話番号023-695-2843
参拝時間8:00-17:00
参拝の所要時間1時間半程度(境内全体)
参拝料大人:300円
主なアクセス方法JR仙山線 山寺駅徒歩すぐ
関連するサイトhttps://rissyakuji.jp/
岩本まさき

岩本まさき

1993年兵庫県西宮市生まれ。奈良大学文学部地理学科卒業後、営業職を中心に勤務。
2022年に旅行会社へ転職後は、ツアーへの添乗や旅行系のライターとして務め、個人・少人数向けツアーも多数企画しています。
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